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ウェンデルジョンソンのことば

門出の季節を迎え、卒園・卒業、進学・進級、ご就職、おめでとうございます。

新しく言語聴覚士やことばの教室の先生になる方もいらっしゃることと思います。


当法人でオンライン発音練習をされた方の中にも、3月で一区切りとなり、練習を終了された方も多数いらっしゃいました。学校や地域の施設へ引き継ぎを行った方を除くすべての方が症状を改善して終了となりましたことを、とてもうれしく思っています。

ここに至るまで、ご本人が言語聴覚士に向き合ってくださったことに心から感謝いたします。

お子さんに関しましては、保護者の方のお力なしには改善には到達できません。

算数や国語の学習であれば、保護者の方自身がご経験があり、道筋がわかりやすいですが、発音の練習は、受けたことがある方のほうが少なく、また、オンラインという特殊な環境の中で不安になられることもたくさんあったかと思います。

最後まで担当者を信頼して、一緒にお取り組み頂いたことに心より感謝申し上げます。


先日、当法人の言語聴覚士と一緒に児童の構音訓練を行ったことばの教室の先生から、発音の改善過程は「サナギから蝶になってはばたくようだった」というお話をしていただきました。

発音の練習を始めてからの数か月間は、変化がわかりづらく本当に改善をしているのか不安になったが、最終的には急に蝶が羽ばたいたかのようにすっかりキレイになって、今まで、サナギの中できちんとひとつづつ改善していたことが後からよくわかった、とのことです。


私たち言語聴覚士は、サナギの中で起こっていることをできるだけ保護者の方にも伝えていかなくては、と思います。そして、信頼していただけるように丁寧に説明し、気軽にご質問していただける言語聴覚士でありたいと思います。


最後に、ウェンデルジョンソンのことばを引用させていただきます。


「・・・なにもかもすっかり、よく聞いてあげて下さい。自分の言うことが聞いてもらえていると感ずることや、他の人が自分の行っていることに関心を持ってくれていると感ずることは、成長しつつある人としてのその人にとっては、実に、すばらしいことなんです。・・・(中略)・・・子どもにとっては、あなたに話をしたいということの方が、正しくしゃべれるかどうかよりも、ずっと重要なことなんだと思うことです。」


1974年日本文化科学社 出版の W.ジョンソン D.メラ― 共編 田口恒夫 訳 『教室の言語障害児』という本の端書から一部引用させていただきました。

現役の言語聴覚士の先生方の中には学生時代に読んでご存じの方も多いかと思いますが、とても古い本です。

ウェンデルジョンソンは、x=話し言葉の特徴 y=聞き手の反応 z=話し手の反応 を立方体で表した「話しことばの”問題”の図」や、現在は否定されている吃音の診断起因説でも有名な方です。


私たちの法人では、できるだけ少ない負担で、きれいな発音の獲得につながるように、症状の改善を目標にした言語療法を行っています。合理性を追求しなくてはいけない場面もあります。

しかしながら、お子さんであっても、大人の方であっても、発音の改善よりもその方の「話したい」という気持ちが一番大切です。発音は一つの道具であって、話したい気持ちがしぼんでしまったら、何の役にも立ちません。

その、一番大切なことを思い出させてくれる、この本の端書を大切にして、新しい一年を歩んでいきたいと思います。



参考文献

● 1974年 日本文化科学社 W.ジョンソン D.メラ― 共編 田口恒夫 訳 『教室の言語障害児』

● 2024年 建帛社 池田泰子 坂田善政 編著 『クリア言語聴覚療法7 吃音・流暢性障害』 

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